正負の数の計算で符号のミスが続く場合は、「−」の意味と数直線上の位置が、まだ結びついていない可能性があります。場面、数直線、加法、減法の順に教えると、符号を決める手順を立てやすくなります。
この記事で分かること
- 符号のミスが起きる3つの背景(「−」の役割・数直線・処理の分け方)
- 場面から数直線、加法、減法へ進む4つの教え方の手順
- 確認問題3問(編集部作成)と、符号の誤答が生まれる理由
本記事は、正の数と負の数のうち、加法と減法に絞って扱います。乗法と除法の符号の決まりは扱いません。教科全体の学習の流れは、算数・数学の学び方で確認できます。
対象:中学校 平成29年告示 学習指導要領(2021年度全面実施)数学編・中1
中1数学の正負の数では何を学ぶか
学習指導要領(中学校 平成29年告示)解説 数学編では、正の数と負の数は第1学年に置かれ、位置は「A 数と式」の「(1) 正の数と負の数」です。知識及び技能として身に付ける内容は、必要性と意味の理解、四則計算、具体的な場面での活用の3つです。
解説は、数の範囲を負の数まで広げると数の集合をとらえ直す必要が出るとし、その例として整数を挙げています。小学校算数科の整数は0と正の整数で、中学校ではそこに負の整数が加わる、という違いです。同じ解説は、小数は第5学年まで、分数は第6学年までの学習も土台に、数の範囲を広げるとしています。
解説は、必要性を理解させる具体的な場面の例として、最高気温の前日との差などを挙げています。手順1を場面から始めるのは、この記述に合わせた編集部の設計です。
正負の数で符号のミスが起きる3つの背景
次の3点は、編集部が整理した見方で、解説が挙げた背景ではありません。
- 「−」の役割を、見分けられていない。 3−5 の「−」は「ひく」を表し、(−5) の「−」は負の数のしるしです。一つの意味でしか読めないと、5−(−8) のように「−」が2つ並ぶ式で手が止まります。
- 数直線上の位置と、数の大小が結びついていない。 小学校の整数は、数字が大きいほど大きい数でした。負の数では、−12 のほうが −7 より0から遠く、数としては小さくなります。
- 符号を決める作業と、絶対値(0からの距離)を計算する作業を、一度に行っている。 (−8)+5 は、答えの符号と、8と5の計算の2つに分かれます。同時に考えると、符号が落ちたり、足し引きを取り違えたりしやすくなります。絶対値の部分は、小学校の整数・小数・分数の計算です。
1点目に関わる記述として、解説が「−」の二通りの読み方に触れた箇所を引いておきます。
例えば3−2という計算は「−」を演算記号と考えると減法とみることができるが,(+3)+(−2)と表し,「−」を符号と考えると加法とみることができる。
(文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」第1学年 A(1)正の数と負の数 正の数と負の数の四則計算(アの(イ),イの(ア),[内容の取扱い](2)) 印刷p.66〜67)
解説は、減法を加法の考え方でとらえられる例として、この読み分けを挙げています。
様子から背景を探す手がかりを、編集部が表にしました。理解度を測るものではありません。
| お子さんの様子 | 背景にありそうな点 | 先に戻る手順 |
|---|---|---|
| 「−」が2つ並ぶ式で、何をするか決められない | 1(「−」の役割) | 手順1・4 |
| 負の数どうしの大小を、迷ったり逆に答えたりする | 2(数直線上の位置) | 手順2 |
| 符号が途中で消える、または符号は合うのに数が違う | 3(符号と絶対値の分け方) | 手順3・4 |
正負の数の教え方:場面から数直線、加法、減法へ進む4つの手順
減法を最後に置くのは、加法の手順を使って解く形にそろえるためです。
解説は、加法の計算方法をまとめる例として、同じ符号の加法から符号の異なる加法へ進む流れを挙げています。手順3・4は、この流れに沿わせた編集部の整理です。

- 反対向きの量を、場面で言葉にさせる。 気温が0度から3度上がれば +3、5度下がれば −5、と基準からの向きを符号で表させます。同じ5でも、向きが反対なら符号も反対だ、と言葉にさせるのがねらいです。計算の前に意味を持たせると、「−」が向きの印だと伝わりやすくなります。
- 数直線に置かせ、右ほど大きいことと、0からの距離を確かめさせる。 0を中央に決め、右を正の向きとする数直線に、−7、2、−12 を置かせます。−12 は −7 より左にあり、小さい数です。0からの距離(絶対値)は 12 と 7 で、負の数では距離が大きいほど小さくなります。位置が見えると、答えの符号の見当をつけやすくなります。
- 加法は、移動で確かめてから、符号と絶対値の手順にまとめさせる。 (−2)+(−5) は、0から左へ2、さらに左へ5動いて −7 です。(−8)+5 は、左へ8動き、右へ5戻って −3 です。どちらも、和 7 に共通の符号 −、差 3 に絶対値の大きい −8 の符号、と言い直せます(下の表)。同符号を先にするのは、符号が異なる場合の「差」の考え方を、和の理解の上に積めるためです。
- 減法は加法に直させ、逆算で確かめさせる。 3−5 は、「−」を演算記号と読めば「5をひく」ですが、符号と読み直して「−5を加える」にすると (+3)+(−5)=−2 です。7−(−4) は、「−4をひく」を「+4を加える」に直して 7+(+4)=11 です。ひいた数を答えに加えてもとの数に戻るか(−2+5=3、11+(−4)=7)で確かめます。
「ひき算をたし算に直す」意味が伝わりにくい場合は、小6の「わり算をかけ算に直した」経験と並べる方法があります。解説は、小学校で分数の除法を乗法の計算とみたことと、中学校で減法を加法の計算とみることを、続けて述べています。小6の経験を確認する記事は、小6算数 分数のわり算のつまずきと教え方です。
手順の補足:符号と絶対値の分け方
手順3・4を、符号と絶対値に分けて整理した表です(編集部作成)。
| 場合 | 答えの符号 | 絶対値の計算 | 例 |
|---|---|---|---|
| 同符号の加法 | 共通の符号 | 和 | (−2)+(−5)=−7 |
| 異符号の加法 | 絶対値の大きいほうの符号 | 大きいほうから小さいほうをひく | (−8)+5=−3 |
| 減法 | 加法に直してから上の2行で決める | 加法の行へ | 3−5=(+3)+(−5)=−2 |
確認問題(編集部作成)
自作の類題を3問置きます。数直線は、お子さんが自分で描いたものを使います。
【確認問題】(編集部作成)
問1 −9、3、−5、0 の4つの数を、小さい順に並べるとどうなりますか。
問2 次の4つを計算すると、答えはそれぞれいくつですか。 (1) (−6)+(−9) (2) (−12)+7 (3) 4−11 (4) 5−(−8)
問3 海面を0mとし、上を正の向きとして表します。ある観測機器が海面から −40m の位置にありました。そこから15m上げ、続けて30m下げると、海面から何mの位置になりますか。
【解答】
問1 −9、−5、0、3
問2 (1) −15 (2) −5 (3) −7 (4) 13
問3 −40+15=−25、−25−30=−55 で、−55m(海面より55m下)
【解説】
問1は、手順2で数直線に置きます。右にあるほど大きいので、左から −9、−5、0、3 の順です。0からの距離が最大の −9 が、数としては最小です。
問2は、手順3・4の計算です。
- (1) 同符号なので、和 15 に共通の符号 − を付けて −15 です。
- (2) 符号が異なるため、差 12−7=5 に、絶対値の大きいほうの −12 の符号が付いて −5 になります。
- (3) 4−11 は (+4)+(−11) に直せて、差 7 に − が付き、−7 です。
- (4) 5−(−8) は 5+(+8) に直せて、13 です。
逆算でも、−7+11=4、13+(−8)=5 と、もとの数に戻ります。
問3は、手順1・3の計算です。上を正としたので、「15m上げる」は +15、「30m下げる」は −30 と表します。−40+15 は、符号が異なるので差 25 に − が付いて −25 です。−25−30 は、(−25)+(−30) に直せば同符号の加法で、−55 になります。
※本問は編集部が作成したオリジナル問題です。学校のテスト・教科書・市販ドリルからの転載ではありません。
間違えやすい罠:符号ミスが起きる理由
確認問題で起こりうる誤答を、編集部が5つに整理しました。「なぜずれるか」の列は、編集部が考えた原因です。
| やりがちな間違い | 正しい進め方 | なぜずれるか |
|---|---|---|
| 問2(3)の 4−11 を 7 と答える | (+4)+(−11)=−7。数直線で右へ4、左へ11動くと0より左に出る | 絶対値だけを先に計算し、答えが0より左に出るかを確かめる手順が抜けるため |
| 問2(2)の (−12)+7 を −19 と答える | 符号が異なるので差の 5 を求め、絶対値の大きいほうの符号を付けて −5 | 同符号で覚えた「絶対値を足して符号を付ける」型を、符号が異なる場合にも使うため |
| 問2(4)の 5−(−8) を −3 と答える | −8 をひく形を 5+(+8) に直して 13 | 演算記号の「−」と負の数の「−」を、同じ一つの記号として一度しか読まないため |
| 問1で、−5 のほうが −9 より小さいと答える | 数直線で右にあるほど大きいので、−9 のほうが小さい | 0からの距離を、そのまま数の大小として比べるため |
| (−3/4)+(1/2) を −1 と答える | 通分して 3/4 と 2/4 の差 1/4 に、−3/4 の符号を付けて −1/4 | 符号の手順は合っていても、絶対値の部分で通分が必要になり、分子どうし・分母どうしを引いてしまうため |
1行目・2行目・5行目は、数直線上で答えの位置を見積もると、気づける場合があります。見当は、1行目が0より左、2行目が −12 より右、5行目が −3/4 より右です。3行目は逆算で、4行目は数直線に置き直して確かめます。
5行目は、絶対値の部分が小学校の分数の計算です。符号を直しても答えが合わない場合は、そちらを確認します。
次に学ぶ単元:中1の文字式へ/前の単元:小6の分数のわり算へ
本サイトの学習順では、正負の数は小6の分数のわり算の次、中1の文字式の前に置いた単元です。この記事は加法と減法までなので、乗法と除法は別の記事で扱います。
- 前の単元(学習順):小6算数 分数のわり算のつまずきと教え方
- 次に学ぶ単元(同じ正負の数の乗法・除法):中1数学 正負の数の計算 乗法・除法のつまずき
- 次に学ぶ単元:中1数学 文字式のかっこの外し方でのつまずき
- 教科全体の順番:算数・数学の学び方
解説は、加法と減法を統一的にみる式の見方が、文字式や方程式でも必要になるとしています。ただし、前の単元・次の単元という記事の並びは、本サイトが決めた学習順です。
【出典】
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」一覧ページ(【数学編】収録) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1387016.htm (2026-10-03 確認)
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」PDF https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_004.pdf (2026-10-03 確認)
※本文で「解説は〜」と述べた箇所のうち、引用ブロック以外は、上記の解説をもとに教え方の地図 編集部が要約・加工したものです。文部科学省が作成した文章ではありません。
※学習指導要領は改訂されることがあります。本記事の記述は上記告示時点のものです。
まとめ
- 正の数と負の数は、中学校第1学年「A 数と式」の(1)です。小学校の0と正の整数に、負の整数が加わって数の範囲が広がります。
- 符号のミスの背景は、「−」の役割、数直線上の位置と大小、符号と絶対値の分け方の3点です(編集部の整理)。
- 教える順は、場面、数直線、加法(同符号から異符号へ)、減法(加法に直す)の4段階です。
- 検算は、数直線で答えの位置を見積もることと、減法を逆算で確かめることで行います。
- 本サイトの学習順では、前の単元は小6の分数のわり算、次の単元は中1の文字式です。
本記事は家庭学習の参考情報であり、学校・専門機関の指導に代わるものではありません。 学習指導要領・教科書の内容は改訂されることがあります。最新の情報は学校・教育委員会にご確認ください。 → 免責事項
最終確認日:2026-10-03

