文字式の計算で、かっこを外すたびに符号がずれる場合は、「3x」や「−x」の読み方と、式を項に分ける見方が、まだ定まっていない可能性があります。式を符号つきの項に分け、かっこの前の符号を中の全項に配る順で教えると、手順を立てやすくなります。
この記事で分かること
- 文字式でつまずく3つの背景(式の読み方・項と係数・かっこの前の「−」)
- かっこを外して、文字の部分が同じ項をまとめる5つの手順(代入での検算つき)
- 編集部作成の確認問題3問と、起こりうる誤答5例
本記事が扱うのは、文字式の表し方、項と係数、かっこの外し方、文字の部分が同じ項(同類項)をまとめる計算です。正負の数の符号の決まりそのものは、中1数学 正負の数のつまずきと符号ミスの理由で扱っています。式で数量を表す学習と、方程式は扱いません。教科全体の見取り図は、算数・数学の学び方にあります。
対象:中学校 平成29年告示 学習指導要領(2021年度全面実施)数学編・中1
中1数学の文字式では何を学ぶか
文字式は、学習指導要領(中学校 平成29年告示)解説 数学編の第1学年「A 数と式」に、「(2) 文字を用いた式」として置かれています。〔用語・記号〕には、項と係数が挙がっています。
解説は、小学校算数科の第6学年で、文字で式に表すことと、文字に数を当てはめて調べることを学習しているとしています。また、第1学年の指導では、数を当てはめる活動などを例に、文字への抵抗感を和らげながら理解させるとしています。この記述を踏まえ、手順1は数に置き換える作業から始める構成にしました。これは編集部の設計です。
解説は、第1学年の計算として一次式の加法と減法を取り上げ、学習の中心は文字が一種類の式だとしています。解説が挙げる主なねらいは、一元一次方程式を解くために必要な程度の計算です。「同類項」という語は、解説では第2学年の〔用語・記号〕に挙がっており、本記事は「文字の部分が同じ項」を基本の言い方にします。
文字式でつまずく3つの背景:かっこを外す前に起きていること
かっこを外す手順の前に、次の3点のどれかが曖昧になっている場合があります。以下は編集部の整理で、解説に載っている区分ではありません。
- 「3x」の書き方の約束が読めていない。 数と文字の間の「×」は省かれ、3x は「3×x」、x は「1×x」、−x は「(−1)×x」を表します。この読みがないと、x に4を入れる場面で「34」と書いたり、x+4x の係数1を見落としたりする場合があります。
- 式を「符号つきの項の和」として見られていない。 4x−7 は「4x と −7 の和」で、「−」は後ろの項の一部です。この見方が曖昧だと、文字の項と数の項を一つにまとめる場合があります。
- かっこの前の「−」を、中の全項への操作として見られていない。 7x−(2x−5) の「−」は、かっこの中の 2x にも −5 にも働きます。最初の項だけ符号を変えると、後ろの項がずれます。
2点目と重なる記述として、解説の第2学年の項にある言及を引きます。
例えば,次のような誤りは,第1学年の式の計算の学習において,項の意味が理解できていないために起こると考えられる。
(文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」第2学年 A(1)文字を用いた式 整式の加法と減法及び単項式の乗法と除法の計算(アの(ア),イの(ア)) 印刷p.103)
解説は、この誤りの例として、かっこを外したあとの文字の項と数の項を足して一つにまとめる計算を挙げています。第2学年で文字を二つ含む整式の加法と減法を学ぶと、項の見方が深まって誤りが減っていく、というのが解説の説明です。この学習を基に、第1学年の計算を学び直す機会も考えられる、とも述べています。
お子さんの様子ごとに、疑う背景と戻る手順を、編集部が表にまとめました。
| お子さんの様子 | 背景にありそうな点 | 先に戻る手順 |
|---|---|---|
| 3x に4を入れると 34 と答える。x+4x の答えが 4x になる | 1(書き方の約束) | 手順1・2 |
| 5x+2 を 7x のように、文字の部分が違う項を一つにする | 2(符号つきの項) | 手順2・4 |
| かっこを外した後、後ろの項の符号がもとのまま | 3(かっこの前の「−」) | 手順3・5 |
文字式のかっこの外し方:数で確かめる5つの手順
数の計算で確かめてから文字式へ進む順にします。
解説は、計算の方法を数の計算と結び付けて説明できるようにすることを大切にしています。手順3で数を使って確かめるのは、この方向に合わせた編集部の整理です。

- 文字に数を入れさせ、式の意味を確かめさせる。 3x の x に4を入れ、3×4 で 12 になること(34 ではないこと)を言わせます。x や −x には「1×x」「(−1)×x」と書き添えさせ、係数の1や−1を見せます。意味が定まらないと、後で正誤を自分で確かめられないためです。
- 式を、符号つきの項に分けさせる。 4x−7 は「4x と −7」、−x+6 は「−x と 6」に分けて書かせ、文字の項には係数を書き込ませます。分けておくと、かっこを外した後に、文字の部分が同じ項を見分けられます。
- かっこを外させる。前が「−」なら、中の全項の符号を変える。 前が「+」ならそのまま外し、前が数なら中の全項にその数をかけます(下の表)。数だけの式で理由を確かめます。10−(3−2) は 10−1 で 9 です。かっこを無視した 10−3−2 は 5 で食い違い、10−3+2 なら 9 で合います。
- 文字の部分が同じ項をまとめさせる。 7x+3−2x+5 は、x の項の 7x と −2x、数の項の 3 と 5 に分けます。係数どうしで 7+(−2)=5、数どうしで 3+5=8 と計算し、5x+8 です。まとめるのをかっこ外しの後にするのは、かっこが残ると文字の部分が同じ項を見落としやすいためです。
- 元の式と答えに同じ数を入れさせ、値が一致するかを確かめさせる。 x=2 を入れると、(7x+3)−(2x−5) は 17−(−1) で 18、答えの 5x+8 も 18 です。誤って 5x−2 とすると 8 になり、18 との食い違いが手がかりです。1つの数だけでは偶然の一致があるため、2つ目に x=−1 のような負の数も入れます。x=0 は、文字の項が消えて係数の誤りを見つけにくいため、避けます。
解説は、学習の初期には 3a+2 のように演算記号が残る式に違和感をもつことがあるとして、留意を求めています。お子さんが手順4の 5x+8 を「まだ終わっていない」と感じ、文字の部分が違う項を足そうとする場合は、手順2に戻ります。この見立ては編集部のものです。
手順3の補足:かっこの前の符号と外し方
かっこの前が何かで、外し方を分けた表です(編集部作成)。
| かっこの前 | かっこの中の項 | 例 |
|---|---|---|
| + | 符号をそのままにする | (4x+1)+(2x−5)=4x+1+2x−5=6x−4 |
| − | 全項の符号を変える | (7x+3)−(2x−5)=7x+3−2x+5=5x+8 |
| 数 | 全項にその数をかける | 3(x−2)=3x−6 |
確認問題(編集部作成)
自作の類題を3問置きます。
【確認問題】(編集部作成)
問1 次の式で、文字をふくむ項の係数をそれぞれ答えてください。(1) 5a−2 (2) −x+8 (3) 6−y
問2 次の3つを、かっこを外して、文字の部分が同じ項をまとめてください。(1) (3x+8)+(5x−6) (2) (6x+1)−(2x+9) (3) −(3x+2)+4(x−1)
問3 姉は折り紙を (3x+5) 枚、妹は (x−2) 枚持っています。x は2以上の整数とします。姉の枚数から妹の枚数をひいた差を、x を使った式で表し、かっこを外して整理してください。
【解答】
問1 (1) 5 (2) −1 (3) −1
問2 (1) 8x+2 (2) 4x−8 (3) x−6
問3 2x+7(枚)
【解説】
問1は、手順1・2の読み取りです。5a−2 は「5a と −2」に分かれ、係数は 5 です。−x は「(−1)×x」、6−y は「6 と −y」で、係数はどちらも −1 になります。
問2は、手順3・4の計算です。
- (1) 前が「+」なので、3x+8+5x−6 と外し、8x+2 です。
- (2) 前が「−」なので、6x+1−2x−9 と外し、4x−8 です。
- (3) −(3x+2) は −3x−2、4(x−1) は 4x−4 です。−3x−2+4x−4 を整理して、x−6 です。
問3は、手順1・3・4の計算です。差は (3x+5)−(x−2) で、前が「−」なので 3x+5−x+2 となり、整理すると 2x+7 です。
※本問は編集部が作成したオリジナル問題です。学校のテスト・教科書・市販ドリルからの転載ではありません。
間違えやすい罠:かっこを外すときの符号のずれ
起こりうる誤答のうち、5つを編集部が選びました。右端の「なぜずれるか」に書いた理由は、編集部の推定です。
| やりがちな間違い | 正しい進め方 | なぜずれるか |
|---|---|---|
| 問2(2)の (6x+1)−(2x+9) を 4x+10 と答える | 6x+1−2x−9=4x−8。x=3 で元の式は 19−15=4、4x+10 は 22 | かっこの前の「−」を最初の項 2x にだけ働かせ、後ろの 9 に働かせていないため |
| 手順5の (7x+3)−(2x−5) を 5x−2 と答える | −(−5) は +5 なので 5x+8。x=2 で元の式は 18、5x−2 は 8 | かっこの中の −5 の符号を変えず、−2x と −5 をそのまま並べるため |
| 5x+2 を 7x と答える | 5x と 2 は文字の部分が違うので、これ以上まとめない。x=2 で 5x+2 は 12、7x は 14 | 「+」が残る式を未完成と感じ、文字の部分が違う項を足して一つにしようとするため |
| x+4x を 4x と答える | x の係数は 1 なので、1x+4x=5x。x=2 で 10 と 8 | 係数の 1 が省かれて見えず、最初の x を数に入れないため |
| 問2(3)の 4(x−1) を 4x−1 とし、−(3x+2)+4(x−1) を x−3 と答える | 4(x−1)=4x−4 で、x−6。x=2 で元の式は −4、x−3 は −1 | かっこの前の数を、最初の項にしかかけていないため |
5行とも、表に書いた x の値を代入すると、正解と誤答の値が食い違います。2行目は「負の数をひく」という正負の数の計算でもあるため、迷う場合は先に正負の数の減法を確認してください。
次に学ぶ単元:中1の一次方程式へ/前の単元:中1の正負の数へ
記事をどの順に並べるかは、本サイトが学習順として定めたものです。文字式は、正負の数のあと、一次方程式のまえに学ぶ位置づけです。本サイトでは、乗法・除法の記事を前に、方程式の解き方と中2の式の計算の記事を後に置いています。
- 前の単元(学習順):中1数学 正負の数のつまずきと符号ミスの理由
- 前の単元(乗法・除法):中1数学 正負の数の計算 乗法・除法のつまずき
- 次に学ぶ単元:中1数学 一次方程式の文章題が立式できない理由
- 次に学ぶ単元(方程式の解き方):中1数学 方程式の解き方 移項とかっこのつまずき
- 中2に進む場合:中2数学 式の計算で符号を間違える理由と教え方
- 教科全体の順番:算数・数学の学び方
解説は、正負の数で身に付ける式の見方や四則計算が、文字式の計算や、方程式の解き方の学習でも必要になるとしています。第1学年の方程式は文字を用いた式の学習の上に立つ、とも述べています。
【出典】
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」一覧ページ(【数学編】収録) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1387016.htm (2026-10-03 確認)
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」PDF https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_004.pdf (2026-10-03 確認)
※本文で「解説は〜」と述べた箇所のうち、引用ブロック以外は、上記の解説をもとに教え方の地図 編集部が要約・加工したものです。文部科学省が作成した文章ではありません。
※学習指導要領は改訂されることがあります。本記事の記述は上記告示時点のものです。
まとめ
- つまずきの背景は、書き方の約束、符号つきの項、かっこの前の「−」の3点です(編集部の整理)。
- 教える順は、数を入れる、項に分ける、かっこを外す、項をまとめる、代入で検算する、の5段階です。
- 前が「−」のかっこは、中の全項の符号を変えます。数の式でも確かめられます。
- 本サイトの学習順では、前の単元は正負の数、次の単元は一次方程式です。
本記事は家庭学習の参考情報であり、学校・専門機関の指導に代わるものではありません。 学習指導要領・教科書の内容は改訂されることがあります。最新の情報は学校・教育委員会にご確認ください。 → 免責事項
最終確認日:2026-10-03

